お店に一歩足を踏み入れるとギョギョっとしてしまいますが、正面には面当ての中に黒々とした空洞を秘めた、鎧兜の甲冑がひとつ、デン、と座ってお出迎えかのように設置されているのです。
そう、そこは美術品の買取専門店で、私は或るものの買取を依頼しようと思って訪れたのでした。
クルマで来たのですが、道々何度も、ポリスメンに止められたらどうしようと思いました。鞄の中にきちんと登録証を入れておいたはずだが……と信号待ちのたびに確認したりして。

その「或るもの」というのは、お察しの通り、携行のためには登録証が必要になるものです。細長い袋に包まれていて、房が先についた紐で口が結んであります。
細長い割に重さはあり、ざっと2キロくらいはあるんじゃないでしょうか。世が世ならそのあたりの辻々でこれを振り回していたのか……と思うと、昔の人の体力はやっぱりスゴかったんだな……と思います。
そうです、私が買取店に持ち込んだものというのは、昔――ほんの100年かもう少し前までは、この国の特権階級の人たちが2本ずつ持ち、時には街中で振り回していたものです。
そう、武士の魂、日本刀を、私は買い取ってもらおうと思って来たのでした。

甲冑のそばにはショーケースがあり、刀掛け台に布をかけ、そのうえに、刃を上にして、鍔や柄を外した状態の日本刀が飾られてあります。
きっと名のある日本刀なのでしょう。そして私と同じように、誰かが、この日本刀の買取を依頼しに訪れたのでしょう……。

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